ココヤシ・アブラヤシ・ナツメヤシの違いから原産地・主要産地・利用方法を解説

ココヤシ・アブラヤシ・ナツメヤシの違いから原産地・主要産地・利用方法を解説

高校地理にはヤシが3種類登場します。基本的にはココヤシとアブラヤシが熱帯作物、ナツメヤシがオアシス作物と覚えてしまえば済む話ですが、それだけでは面白くないので、もう少しだけ詳しく勉強していきましょう。

ココヤシ

 ココヤシは西アジア~オセアニアのどこかが原産と考えられるヤシの一種です。遺伝調査では、東南アジア~メラネシアが有力な原産地となっています。種に関わらず、ヤシと言えば最初に思い出されるのがココヤシです。高温多雨の気候を好み、ビーチリゾートで見かけるヤシの木がこれにあたります。ココヤシの実は人間の頭ほどの大きさがあるため、ヤシの木の下にいると上から実が落ちてきて危険です。ビーチリゾートでは注意が必要です。

 ココヤシの実のことをココナッツといいます。ココナッツを割ると、中は液体で満たされており、少し味がしますが飲料となります。液体を抜いた後の空洞(実の内側)には白い胚乳が付いており、これは甘みがあって食べることができます。この胚乳を乾燥させたものをコプラといいます。このコプラのことをココナッツオイルと呼ぶことがあります。ココナッツオイルはヤシ油という言い方もあるので、次の章に出てくるパーム油と混同しないようにしましょう。

 ヤシ油 → ココヤシから取れる油脂。ココナッツオイル。

 パーム油 → アブラヤシから取れる油脂。

コプラの生産(2017年)『データブックオブザワールド』より

1位 フィリピン 41.7%

2位 インドネシア 28.7%

3位 インド 13.1%

4位 ベトナム 4.7%

5位 メキシコ 3.8%

アブラヤシ

 アブラヤシは西アフリカ原産のヤシの一種です。鶏卵ほどの大きさの実が1000個ほど集合して大きな塊を作ります。この実の果肉と種子それぞれから油脂が取れます。この油のことをパーム油と呼びます。前述したヤシ油との区別に注意しましょう。パーム油は調理油、マーガリン、洗剤などに使われます。

 原産地は西アフリカですが、現在の生産の中心は東南アジアです。東南アジアにおけるプランテーション作物の代表例とも言えます。特にマレーシアにおいては、「天然ゴムからアブラヤシへの作物転換が1960年頃から進んだ」という話が受験地理のお決まりネタとなっています。

パーム油の生産(2014年)『データブックオブザワールド』より

1位 インドネシア 51.1%

2位 マレーシア 34.3%

3位 タイ 3.2%

4位 コロンビア 1.9%

5位 ナイジェリア 1.6%

ナツメヤシ

   ナツメヤシは現在のイラク周辺が原産地と考えられるヤシの一種です。紀元前7000年頃にはすでに栽培が始まっていたようです。乾燥地を好むヤシで、ココヤシやアブラヤシが熱帯作物であることとの比較でテストに出題されます。

 少し大きなブドウのような実をつけます。これが房を作るので、やはり大きなブドウのような見た目となります。この実はデーツとも呼ばれ、加工したものは日本でも一般的に食されています。加工していない干しブドウのような状態のデーツは、日本の食料品店では見かけませんが、中東などの乾燥地ではこの干しブドウのようなデーツを保存食して食用します。デーツ一つで小腹を満たすことができるため、砂漠の遊牧民にとっては欠かせません。これはまるで『ロード・オブ・ザ・リング』の「レンバス」か『ドラゴンボール』の「仙豆(せんず)」のようなものです。

 受験生は「オアシスではナツメヤシばかり作っている」と誤解しやすいようです。ナツメヤシの栄養価が高いとは言っても主食ではありません。人間が生きていくには衣食住が必要なわけで、優先順位が高いのは小麦と綿花です。これらにプラスして、ナツメヤシも育てているというわけです。

ナツメヤシの生産(2016年)『データブックオブザワールド』より

1位 エジプト 20.0%

2位 イラン 12.6%

3位 アルジェリア 12.2%

4位 サウジアラビア 11.4%

5位 アラブ首長国 7.9%

その他のヤシ

 この章では、中学高校の地理では登場しないかもしれませんが、実生活または教養として知っておいても良いと思われるヤシの種類を紹介します。

サゴヤシ

 サゴヤシは、樹幹から食用デンプンが取れるヤシのことです。東南アジアやニューギニア島では最近まで食用とされてきた歴史があり、マルク(モルッカ)諸島からニューギニア島の低地では現在でも主食としている人々がいます。

アサイー

 アマゾン原産のヤシの一種で、ブルーベリーに似た実をつけます。この実を乳製品に混ぜたりスムージーにしたりして飲用に用いる方法が日本でも広まりつつあります。

ロベ

 東南アジア原産のヤシの一種で、日本では八丈島で栽培されているヤシとして有名です。フェニックス・ロベレニーというのが正式名称ですが、八丈島では「ロベ」と呼ばれています。主に観賞用で、鉢に植えたり庭に植えたりします。国内で流通するロベのほぼすべてが八丈島産だそうです。八丈島では、庭先から道端まで、いたるとことに生えています。

  地理用語一覧はこちら

農業地理カテゴリの最新記事