コーヒーの栽培条件・主な品種・統計のポイントを解説

コーヒーの栽培条件・主な品種・統計のポイントを解説

高校地理におけるプランテーション作物・嗜好作物の代表例ともいえるコーヒー。「とりあえずブラジルやコロンビアが有名なんでしょ?」という認識だけでは駄目です。ベトナムやドイツについても押さえておく必要があります。

コーヒーの栽培条件

 『地理用語集』によると、生育期には高温多雨、結実期には乾燥を好むそうで、また排水が良好で昼夜の気温差が大きい高原が適地だそうです。よって、雨季・乾季のある気候(サバナ気候熱帯モンスーン気候)が適していることになります。また熱帯雨林気候なら、昼夜の気温差のある高原が良いようです。排水の良い土地を好むということで、火山性の土壌を好むため、これらの条件をすべて満たしているのがブラジルということになるわけですね。なお、コーヒーの木は寒さには弱く、0℃を下回ると枯死してしまいます。

 ブラジルにおけるコーヒー産地の環境

  気候 → サバナ気候(雨季・乾季が明瞭)

  地形 → ブラジル高原(昼夜の気温差大)

  土壌 → テラローシャ(肥沃な火山性土壌)

しかし品種によっても栽培条件に違いがあり、ロブスタ種の方が環境に強く、アラビカ種の方が繊細です。

コーヒーの栽培が可能な南緯・北緯25度未満の赤道周辺は「コーヒーベルト」とも呼ばれています。

コーヒーの原産地と伝播

 コーヒーは、アカネ科コーヒー属に属する植物です。次の章で説明しますが、品種によって原産地が異なります。しかしどれもアフリカ大陸であることは共通しています。アフリカではコーヒーの種子を飲食していましたが、これが世界に伝播した契機についてはいくつかの逸話があります。主なものは次の二つです。

 ①キリスト教の修道院で眠気覚ましに使われていた(9世紀)。

 ②イスラム教徒の医師が治療に利用していた(13世紀)。

 コーヒー豆を焙煎して飲用するという現在のような利用法がいつ始まったのかは分かっていませんが、1400年代に使われたと見られる道具がトルコ、イラン、エジプトで発見されているため、15世紀には本格的に飲用されていたのでしょう。

 ヨーロッパでは17世紀に普及します。当時、ヨーロッパの船舶の寄港が許されていたのがイエメンのモカ港で、そこからコーヒー豆が積み出されていたため、「アラビア・モカ」という名称で呼ばれるようになりました。

 ヨーロッパでのコーヒー需要に応えるため、オランダがコーヒーのプランテーションをセイロン島で、次いでジャワ島で始めます。18世紀にこのジャワ・コーヒーがヨーロッパに入ってくるようになりました。

 ちなみに、現在「カフェ・モカ」と言えばコーヒーにチョコレートを入れた飲み物のことを指しているようです。もともと「モカ・コーヒー」にはチョコレートのような風味があることから、現代のアメリカでコーヒーにチョコレートを入れて「カフェ・モカ」と呼ぶようになったとのことです。

コーヒーの主な品種

アラビカ種 

アラビカ種は「アラブの品種」という意味ですが、原産地はエチオピアです。エチオピア南西部のカッファ地方が原産で、この地名に由来してコーヒ呼ばれるようになったのは有名な話です。 

世界のコーヒー生産の主流となる品種で、高品質とされています。ただし栽培条件が繊細でもあります。

ロブスタ種

ロブスタ種はコンゴ原産です。「強い品種」という意味ですが、これはアラビカ種に比べて過酷な環境でも育つからです。アラビカ種に比べて風味は劣るとされているため、インスタントコーヒー用や、レギュラーコーヒーのブレンド用に使われます。ベトナムではあえてこの品種を中心に栽培し、生産量を増やしています(世界2位)。

リベリカ種

西アフリカ原産で、「リベリアの品種」という意味ですが、決してリベリアが原産地というわけではないようです。かつては上記2つの品種と合わせて「三大品種」とされていましたが、現在リベリカ種はほとんど生産されていません。

高校地理に登場するコーヒーの主な産地

 『データブックオブザワールド』で主な国の輸出品上位5品目(2017年)を見てみますと、コーヒー豆が登場する国は以下の通りです。

 アジア:無し

 アフリカ:エチオピア(1位)、タンザニア(5位)

 ヨーロッパ:無し

 北米:グアテマラ(4位)、ホンジュラス(1位)

 南米:コロンビア(3位)

 オセアニア:無し

コーヒーに関する統計

コーヒー豆の生産(2016年)単位:千t 『世界国勢図会』より

1位 ブラジル 3,019 (32.7%)

2位 ベトナム 1,461 (15.8%)

3位 コロンビア 745 (8.1%)

4位 インドネシア 639 (6.9%)

5位 エチオピア 469 (5.1%)

 

コーヒー豆の輸出(2016年)単位:千t 『世界国勢図会』より

1位 ブラジル 1,824 (25.5%)

2位 ベトナム 1,400 (19.5%)

3位 コロンビア 735 (10.3%)

4位 インドネシア 413 (5.8%)

5位 ドイツ 336 (4.7%)

ベトナムとコロンビアは、生産量のほとんどを輸出していることが分かりますね。

ドイツは国内でただの一粒もコーヒー豆を生産していませんが、輸出量は世界で5位となっています。これは、生のコーヒー豆を輸入して焙煎して輸出しているからで、焙煎した豆の輸出量に関していえば、世界で2位となります(1位はブラジル)。

参考「Germany a coffee giant without growing a single bean」independentaustralia.net

ベトナムは、フランスの旧植民地ということで19世紀にはコーヒー栽培が始まっていました。しかし、1986年に社会主義型市場経済を導入するドイモイ政策が始まったことでコーヒー生産が急増し、現在では世界2位に生産量を誇っています。

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