焼畑とはどのような農業か~ハック耕の意味・やり方・作物の種類も解説

焼畑とはどのような農業か~ハック耕の意味・やり方・作物の種類も解説

貧しい後進的な地域の農業と誤解されがちな焼畑ですが、その実情は持続可能で合理的な農業です。本記事では、ホイットルセーの1936年の論文をもとに、伝統的な焼畑の姿を学習します。焼畑の作物や、焼畑が次にどのような農業に移行するかも説明します。また焼畑のことをハック耕と呼ぶ理由も解説します。

焼畑の名称について

 高校地理において「焼畑」もしくは「焼畑農業」は、ホイットルセーの農業地域区分の一つとして学習されます。書き方は「焼畑」でも「焼き畑」でもよく、また「焼畑農業」と呼ぶこともあります。読み方も、「やきはた」でも「やきばた」でも構いません。

 ホイットルセーはこの農業区分を「Shifting Cultivation」(移動農耕)と名付けました。ここには何かを焼くような意味は含まれていません。ですので、より焼畑に近い英語の表現としてslash-and-burn(切って燃やす)とか、fire-fallow cultivation(火と休閑の耕作)という言い方をすることもあります。

 実際のところ、焼畑というのは移動耕作の一つの形式です。しかし、本ブログは主に中学・高校の地理を学ぶことを目的としていますので、焼畑という表現で統一して話を進めていきます。

 なお、焼畑農業のことを「ハック耕」と呼ぶことがあります。「ハックと呼ばれる棒を使う農業だから」という説明を目にします。しかしこのハックという言葉はドイツ語のhacke(鍬、クワ)のことで、ドイツ人地理学者が焼畑のことをハック耕と呼んだことが始まりのようです。必ずしも焼畑農民が棒のことをハックと呼んでいるわけではないようです。英語でハック(hack)には「(斧などで)切り開いて進む」という意味があるので、森林を切り開いて新しい耕地を作るイメージが焼畑にはしっくりきますね。

焼畑とはどのような農業か

 焼畑は、低緯度地方の熱帯雨林地帯からサバナ地帯で主に行われる農業方式です。これらの地域では、土壌は一般的にラトソルのため肥沃ではありません。そのため、自然の草木を燃やし、その草木灰を唯一の肥料として農業を行います。

 これらの肥料だけでは定住しての農耕は不可能で、通常1~3年が経つと生産量が落ち、耕地を替える必要が出てきます。また土が肥沃な状態でも、雑草が増えすぎると耕地を移動します。何度か耕地を替えていると、次第に耕地が居住地から離れすぎてしまい不便になります。そこで、通常5~10数年で住居を移動することになります。

 住居は草ぶき屋根の小屋で、住居を移動する際に運べないような物は所有しません。生活に必要なものは、周辺で手に入るものだけです。農業に使う道具も杖程度で、この杖で土を耕したり、土中の作物を掘って探したりします。得られる作物は非常に少なく、収穫期の前には食糧危機が当たり前にやってきます。

 放棄された耕作地も、いずれは草木が生えてきて再び焼畑を実施できるようになります。そういう意味では持続可能な農業と言えます。

 原始的な農業のように思われがちですが、高温多湿の熱帯地方においては理にかなった方法とも言われています。モンスーンアジアでは、低地なら水田耕作を行うため、必然的に焼畑地帯は山間地が主となり、「焼畑しかできない」「仕方なく焼畑をしている」というイメージを持つ人もいることでしょう。しかしアフリカでは平地でも焼畑が主流となることもあります。これはやはり、焼畑こそが合理的なケースがあるということでしょう。

焼畑で栽培される作物

 焼畑で栽培される作物は、陸稲、ヒエ・アワなどの雑穀、キャッサバ・ヤムイモ・タロイモなどのイモ類が代表例です。生産量は多くはなく、基本的に自給的な農業と言えます。先述したように収穫期の前には食糧不足が発生することもあります。(私がタイのバンコクに住んでいた2001年頃、マクドナルドでタロイモのパイをよく食べていました。甘くて美味しかった記憶があります。)

 焼畑は粗放的で、焼畑農民は貧しい暮らしを送っているというイメージもあるかもしれません。しかし、焼畑に費やす労働時間はとても短いものですので、労働生産性は極めて高いという研究もあります。つまり焼畑農民は一日の内、というか一年の内、焼畑に費やす時間に比べて他のことをしている時間の方がはるかに長いわけです。この時間は狩猟採集をしたり、家族でダラダラ過ごしたりしているわけで、生活の質は実は高いのかもしれませんね。

焼畑の次の段階

 焼畑地帯に施肥技術が普及すると、耕地を移動する必要がなくなることがあります。また、バナナや天然ゴムのような樹木性の換金作物の栽培が増えることも農民の移動を抑制します。このように定住化が進んだ状態は、ホイットルセーの農業地域区分では粗放的定住農業(原始的定住農耕Rudimental Sedentary Tillage)と分類されています。また、欧米資本により大規模に商品作物を作るようになると、ホイットルセーの区分ではプランテーション農業(商業的大農園作物農耕Commercial Plantation Crop Tillage)と分類されます。

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