ダイヤモンドは地理の試験でたまに登場します。他の資源のような、資源国で採って先進国で使うという図式が当てはまらないのが特徴です。本記事では、ダイヤモンドの産出国と加工国の違いについて解説します。
ダイヤモンドの特性
「A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)」
これはデビアス社が1947年に使い始めたキャッチコピーです。これによりダイヤモンドの価値は跳ね上がり、人々の潜在意識に「ダイヤモンドは価値がある」と植え付けることに成功したのです。バレンタインのチョコレートや、最近の恵方巻と同じようなものですね。
しかし、実際のところダイヤモンドが美しいのは事実なので、装飾品として一定の価値があるのは納得できます。
また、ダイヤモンドはその硬さから、工業用のノコギリや研磨材として使用されます。宝石用にならない色のダイヤモンドや、近年では人工的に合成したダイヤモンドが工業用に使われます。
ダイヤモンド原石の産出
ダイヤモンドの産出は、安定陸塊に偏っています。国で見ると、ロシア、アフリカ南部の国々、オーストラリア、カナダで多くなっています。ロシアではアルロサ社が、アフリカやカナダではデ・ビアス社が最大の採掘会社です。
ダイヤモンドの産出(2015年)『データブックオブザワールド』より
1位 ロシア 32.9%
2位 ボツワナ 16.3%
3位 コンゴ民主 12.6%
4位 オーストラリア 10.7%
5位 カナダ 9.2%
ダイヤモンドの加工
ダイヤモンドの研磨加工は、原石の産出国とは異なります。これは歴史的にダイヤモンドの流通が、イギリスのデ・ビアス社を中心とするヨーロッパの企業によって独占されてきたことによります。アフリカなどの原産国から運ばれてきたダイヤモンドは、ベルギー、イスラエル、インド、UAEなどに運ばれて研磨加工がなされるのですが、現状では宝石用ダイヤモンドの研磨加工の9割はインドで行われています。インドのグジャラート州スーラト市に研磨加工業者が集中しています。
歴史的には、ベルギーのアントウェルペン(英語名アントワープ)もダイヤモンドの流通・研磨加工の都市として有名です。イスラエルではテルアビブ、UAEではドバイがダイヤモンドの都市として知られています。
ダイヤモンドの研磨加工が盛んな都市
スーラト(インド)
アントウェルペン(ベルギー)
テルアビブ(イスラエル)
ドバイ(UAE)
広州・深圳(中国)
ダイヤモンドの貿易
ダイヤモンドの流通は、少数のキープレイヤーによって握られているのが現状です。伝統的な流通の動きとしては、採掘されたダイヤモンドはロンドンを経由して、研磨加工を行う国に移動します。ですので、この少数の国では、ダイヤモンドの輸入と輸出が共に多くなります。例えば、『データブックオブザワールド』で「おもな国の貿易額・輸出入品・貿易相手国(2017年)」という統計を見ますと、次の国々ではダイヤモンドが輸出入共に上位5品目に入っています。
インド
アラブ首長国連邦(UAE)
イスラエル
ボツワナ
(香港)
また、近年は中国が伝統的な流通ルートを利用せず、直接資源国と交渉してダイヤモンドを入手しているようです。これによりインドが、ダイヤモンド原石の入手に困難を抱えているという報道もあります。(2014年12月26日 ロイターの報道より)
ダイヤモンドの輸出国(2014年)米ドルによる輸出額による
1位 インド
2位 アメリカ合衆国
3位 ベルギー
4位 イスラエル
5位 アラブ首長国連邦(UAE)
産出国よりも、研磨加工を行う国の方が輸出国の上位に来ます。その理由は、統計の単位が金額ベースになっているからです。加工されたダイヤモンドの方が価値が高いからです。
合成ダイヤモンド
現在では人工的にダイヤモンドを合成する技術が確立されていますので、装飾用・工業用共に安価なダイヤモンドが出回っています。デビアス社ですら合成ダイヤモンドを扱っているのですから、本物にこだわるかどうかは本人次第ですね。
まとめ
地理の入試問題等でときどき登場するダイヤモンド。「資源国で採って、先進国で売る」という単純な図式でないだけに、研磨加工の強い国を個別に把握しておく必要があります。