気候学習の終盤に登場するツンドラ気候は、試験等での出題頻度もそれほど高くはありません。しかしながら、雨温図の判別では正確に数値を押さえておく必要がありますし、分布域も正しく把握しておく必要があるでしょう。本記事では、ツンドラ気候の植生、土壌、雨温図の判別法などを解説します。
ツンドラ気候(ET)の特徴
ケッペンがツンドラ気候に付けた記号はETです。Eは寒帯、つまり「木が生えないほど寒い」ということ。Tはドイツ語で「Tundren」もしくは「Tundra」のことで、これはツンドラ気候の植生を表しています。寒帯(E)気候は「寒すぎて木が生えない」気候ですが、これは更に二つに細分化され、「木は生えないが、コケ程度なら生える」というツンドラ気候(ET)と、「木もコケも何も生えない」という氷雪気候に分かれます。ケッペンは、植生に注目して気候区分を作ったわけですから、寒帯気候かどうか、ETかEFか、これらは植生によって区分されます。無樹木気候である乾燥帯(B)と寒帯(E)は、記号の二文字目が大文字になるので注意が必要です。
もう少し具体的にETになる条件を説明します。「寒すぎて木が生えない」とは「最暖月平均気温が10℃未満」のことです。「コケ程度なら生える」とは、「最暖月平均気温が0℃以上ある」ということです。
E ⇒ 寒帯 = 最暖月平均気温 が 10℃ 未満
T ⇒ ツンドラ植生(コケ程度なら生える) = 最暖月平均気温が0℃以上
ツンドラ気候(ET)の雨温図
まず気温を見ます。最暖月平均気温が10℃未満であること。これで寒帯と判断します。
更に最暖月平均気温が0℃以上であること。これでツンドラ気候であることが分かります。
厳密に言えば、寒帯かどうか判断する前に乾燥帯かどうかを判断する必要があるのですが、寒帯と乾燥帯を微妙なラインで判別させるような機会は無いでしょう。
ツンドラ気候(ET)の植生
D気候とE気候の境界線である「最暖月平均気温10℃」というのは、樹木が生えるか生えないかの境界線です。よって、寒帯気候(E)であるならば樹木が見られません。ただし、ツンドラ気候の場合は最暖月平均気温が0℃を上回ります。これによって夏季に地表の氷が融け、この期間だけコケ等が生えてきます。
「コケ等」と何度も書いてきましたが、教科書的な書き方をすると「地衣類」と「コケ類」という言い方がより正確です。
地衣類 ⇒ 菌類と藻類の共生体。どちらも単独では生活できない。
コケ類 ⇒ かつては「蘚苔類」と言われていた。地理の古いテキストでは蘚苔類と書いてあることも。
ツンドラ気候(ET)の土壌
ツンドラ気候は降水量は少ないものの気温が低いため、蒸発量が少なく土壌は常に過湿状態にあります。また、1年の大半が0℃以下のため、地下約60~70㎝の深さに永久凍土層が作られます。このような成帯土壌をツンドラ土といいます。
ツンドラ気候(ET)の分布
寒帯気候は亜寒帯(冷帯)気候よりも更に寒い場所に見られます。よって、寒帯は北極と南極の周辺に見られます。ツンドラ気候に関して言えば、亜寒帯気候と同様に、高山を除けば北半球にしか見られません。これは、本来ツンドラ気候になるであろう緯度帯に陸地がほとんど無いからです。結論としては、ツンドラ気候は北半球の北極海沿岸に見られます。
これに高山も含めると、チベット高原とアンデス山脈にもツンドラ気候が見られますが、これらは高山(H)気候区という形で扱われる場合もあります。高山気候区はケッペンの気候区分ではありません。
ツンドラ気候(ET)の分布 … 北半球の北緯65~80度の辺り
(チベット高原、アンデス山脈を含むことも)
ツンドラ気候(ET)における人々の生活
1年の大半はコケも生えない場所のため、人間が生活できる環境ではありません。いわゆるアネクメーネです。夏季には地表の氷が融け、コケ程度なら生えるため、トナカイを育てる遊牧民がやってきます。高校地理では、北欧のサーミや北米のイヌイット(エスキモー)といった遊牧民が登場します。