中国の最も奥まった場所に位置する新疆ウイグル自治区。ここ数年は耳をふさぎたくなるような報道がされています。しかし本記事では、地理を初めて学ぶ人のために、ウイグル族の基本的な特徴を紹介していきます。
ウイグル族の民族的特徴
高校地理におけるウイグル族の扱いは、「自治区」、「言語」、「宗教」の三つが中心となります。中国における民族自治区(新疆ウイグル自治区)については後の章で説明しますので、ここでは、ウイグル族の民族的特徴として重要な言語と宗教について見ていきます。
言語(アルタイ語族)
ウイグル族の話すウイグル語は、言語の系統としてはアルタイ語族に属します。アルタイ語族は、トルコ系とモンゴル系を含む大きな言語グループで、日本語や朝鮮語もこのグループに属するとする説もあります。現在の地理の教科書では、日本語を「その他」として独立した言語のように扱っています。しかし少し古い参考書や、学問系統によっては日本語をアルタイ語族に加えていることがあるので注意が必要です。ちなみに東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の『FIELD PLUS』という冊子を読んでいたら、日本語がアルタイ語族として扱われていました。
ウラル語族とアルタイ語族を合わせて、ウラル・アルタイ語族と一括りにすることもあります。ウラル語族とは、ウラル山脈を越えてヨーロッパに広がったアジア系の人々のことで、ハンガリー(マジャール語)やフィンランドがこれに含まれます。
一方で、シナ・チベット語族とは明確に分けられていますので、ウイグル語と中国語は関連性が低いということが言えます。
新疆ウイグル自治区の一帯を「東トルキスタン」(東のトルコ人の土地)を呼ぶことがありますので、ウイグル族は系統としてトルコ系ということが分かります。言語系統も、大きな括りではアルタイ語族で、小さな括りではトュルク語派ですので、やはりトルコ系だと分かります。
宗教 (イスラム教)
ウイグル族の宗教は基本的にイスラム教スンナ派です。中国の主な少数民族では、ウイグル族とホイ(回)族がイスラム教となります。受験地理では、イスラム教ネタは「女性」と「豚肉」を絡めて出題されることが多いようです。例えば省ごとの豚肉の生産量を見ても、新疆ウイグル自治区でそれなりに豚肉の生産が見られます。この理由は、新疆ウイグル自治区においてウイグル族の人口は半分もいないからです。つまりウイグル族の自治区とはいえ、実際には漢民族も同じくらいいて、豚肉の需要があるわけですね。
ウイグル族の分布
この章ではウイグル族の人口や居住国について紹介します。
日本版Wikipediaの「ウイグル人」という記事では、www.joshuaproject.netというHPからデータを引用しています。それによると、世界でのウイグル人全体の人口は約1235万人です。このうち、9割以上にあたる約1188万人が中国に住んでおり、2番目にカザフスタンの約34万人、三番目にキルギスの5万5千人と続きます。
次に、英語版Wikipediaの「Uyghurs」という記事では、国ごとに様々なデータを参照しています。世界全体で約1350万人のウイグル人がいて、中国に約1212万人、カザフスタンに約22万人、トルコが約6万人となっています。
日本語版と英語版のWikipediaで数字が大きく異なりますが、9割以上が中国に住んでいることは共通しています。
新疆ウイグル自治区におけるウイグル族
新疆ウイグル自治区は、中国の省に相当する自治体で、中国全体ではウイグル族を含む5つの少数民族が自治区を与えられています。「ウイグル」は漢字で「維吾爾」と表記します。
『データブックオブザワールド』によると、中国の総人口におけるウイグル族の比率は0.8%(2010)で、約1,006万人のウイグル族がいるとのことです。新疆ウイグル自治区の総人口は約2,445万人で、そのうち45.8%がウイグル族、40.5%が漢族(2010)だそうです。
区都ウルムチに限って言えば、74.9%が漢族でウイグル族は12.5%(2010)しかいません。
1950年代以降に中国本土より漢族が大量に移住してきました。