高校地理に登場する土壌の代表例にポドゾルが有ります。受験地理では、「色は白で、肥沃ではない」と、これだけ覚えれば済むわけですが、授業者としては理由が説明できなければ生徒も納得しないでしょう。本記事では、ポドゾルが白くなる理由、そしてポドゾルの名前の意味について説明していきます。
ポドゾルの名称について
ポドゾルとはロシア語で、直訳すると「灰の下」という意味になります。日本語の多くの書物は、ポドゾルを「灰のような土」と訳していますが、これは意訳といえます。確かに、ポドゾルの色は灰のように白く、教科書では灰白色という表現が使われています。それでは、なぜ「灰の下」という名前が付けられたのでしょうか。この土の名付け親は、「現代土壌学の父」と呼ばれるロシア人土壌学者ドクチャエフです。彼は、ポドゾルが分布する地域を調査し、現地人が「灰の下にある土」と表現していたことから、そう名付けたようです。ポドゾルは肥沃でないため、現地人たちは森を燃やして焼畑を行っていました。焼畑の灰の下に、更に灰のような色の土があることから、現地人は、古来より行われてきた焼畑の灰が堆積したものだと勘違いしたのかもしれない、ということです(参照『土の地理学』朝倉書店)。
ポドゾルはなぜ白いか
高校地理の教科書・参考書には、漂白作用によって白くなったと書かれています。
ポドゾルが作られるためには条件があり、まず低温・湿潤であること(亜寒帯が望ましい)、そして針葉樹林帯であること(やはり亜寒帯が望ましい)です。まず低温であるため、落ち葉などの分解が進みません。そして湿潤であるため、水分が蒸発せずに下方に流れます。そのためカルシウムやマグネシウムなどの塩基類は溶けて流れ出します。また、針葉樹林の落ち葉にはフルボ酸が多く含まれており、この酸が鉄・アルミニウムを溶かして、やはり下方へ流します。土の赤茶色は鉄・アルミニウムの成分です。結果、上層の土壌中にはケイ酸が残ることになり、これが白い色の土になっているというわけです。
ですので、下層へ流れた鉄・アルミニウムは白い土の層より下に蓄積するため、ポドゾルの白い土を掘れば、次には赤い土が出てくることになるわけです。この赤い土の層も含めてのポドゾルと言えます。(写真参照)
ポドゾルの分布
ポドゾルは亜寒帯気候の針葉樹林帯に主に生成されるため、その分布は亜寒帯気候のそれに近くなります。つまり成帯土壌です。
ポドゾルの主な分布 ⇒ ロシア、カナダ、アラスカ
日本では、北海道の稚内近辺と高山帯にみられます。
有機酸を多く含む樹種ならば同じような作用が発生するため、ニュージーランドのカウリー林、マレーシアのカプール林、日本の四国地方のコウヤマキ林の木の下などにもポドゾルが生成されます。生徒が混乱するので、中高の地理の授業では触れなくてよいでしょう。
ポドゾルと人間生活
ポドゾルは、低温地域ゆえに肥沃な腐植層が作られません。ですから農業には不向きで、伝統的には焼畑が行われてきました。現在は亜寒帯地域の焼畑農業は衰退し、林業にシフトしています。