サンゴ礁地形についてダーウィンから白化現象まで解説します

  • 2020.11.01
  • 2020.11.06
  • 地形
サンゴ礁地形についてダーウィンから白化現象まで解説します

高校地理では、ついつい「裾礁→堡礁→環礁」と呪文のように覚えるだけになってしまうサンゴ礁地形。本記事では、サンゴ礁地形についてもう少しつっ込んだ説明をしていきます。 

サンゴ礁とは何か 

 サンゴ礁は、サンゴと呼ばれる動物のうち造礁サンゴが作る地形です。造礁サンゴは体内に褐虫藻という藻類を共生させ、そこから光合成産物を得て成長します。藻類の共生のないサンゴは宝石サンゴと呼ばれ、光合成によるエネルギー供給を得ないため深海にも生育します。造礁サンゴは海洋中の二酸化炭素やカルシウムを体内に取り込み、炭酸カルシウムでできた骨格を作りながら成長します。古くなった骨格は石化し石灰岩となり、新しい体は石化した部分から上へ向かって育っていきます。 

サンゴ礁はどのような場所に作られるか 

 造礁サンゴの成長には光合成が必要なため、日光の届く浅い海にサンゴ礁は形成されます(水深45m以浅)。温かい海域を好みます(海水の表面水温2728℃が最適)が、海水温が30℃を越えると白化現象で死んでしまいます。陸からの土砂の流入の少ない透明な海水を好みます。

 条件 

 浅い海:水深45m以浅 

 暖かい海:水温27~28℃(要18℃以上~30℃未満) 

 綺麗な海 

 このような条件を満たしているのは、赤道周辺から、およそ南北回帰線のあたりまでです。大陸西岸は寒流の影響で水温が低く、サンゴ礁の分布は少ないです。一方、大陸東岸は暖流の影響で、回帰線を越えてサンゴ礁の分布が見られます。 

 日本では、沖縄にはサンゴ礁がよく発達しています。本州では、日本海側は新潟県まで、太平洋側は神奈川県・千葉県が北限であると確認されています。 

  

 分布 

 赤道から、およそ南北回帰線まで(大陸西岸は少ない) 

サンゴ礁の形態と発達 

 サンゴ礁は、自身の古い骨格の上に成長していくという特性があり、また日光を求めています。よって地殻変動や海水面の上昇によって水深が深くなった場合には、更に上へ上へと成長することになります。その結果、大きく3つの形態に分けることができます。 

裾礁(きょしょう)fringing reef 

 大陸や島の海岸をふちどるように発達している。裾礁の「裾(きょ)」は「すそ」という意味で、陸地の裾(すそ)に位置しているように見えます。 

 

堡礁(ほしょう)barrier reef 

 海岸から離れた場所にサンゴ礁が発達している場合、これを堡礁(バリア・リーフ)と呼びます。海岸と堡礁の間には、サンゴ礁で取り囲まれた礁湖(ラグーン)ができることがあります。礁湖は湖とは書きますが、外洋と所々でつながっているため海水の出入りがあります。 

環礁(かんしょう)atoll 

 本来中心にあったはずの島が沈降もしくは海面上昇により水没した後、サンゴ礁だけが発達してできます。環礁のサンゴ礁に取り囲まれた海も礁湖(ラグーン)と呼びます。礁湖の深さは、世界全域で最大70mほどと一定です。 

サンゴ礁が発達する理由 

 サンゴ礁の発達は、「大陸や島が沈降してできた」という説と、「海水面が上昇してできた」という説があります。この二つの説について説明します。 

ダーウィンの説 

 進化論で有名なイギリスの地質学者・生物学者チャールズ・ダーウィンは、島が沈降することで裾礁→堡礁→環礁と発達すると説きました。 

デイリーの説 

 アメリカの地質学者レジナルド・デイリーは、堡礁や環礁にできた礁湖の水深が世界的に同じ深さであることに注目し、氷期後の海水面の上昇が堡礁や環礁を作ったのだと主張しました。 

サンゴ礁地形を地形図で読み取る 

 サンゴ礁が海面から顔を出している場合には、地形図では「隠顕岩(いんけんがん)」という地図記号が使われます。 

  隠顕岩の地図記号 

  地図記号:隠顕岩

 サンゴ礁が隆起もしくは海水面が低下し、サンゴ礁が陸地化した場合には、これを隆起サンゴ礁と呼びます。その場合、これは石灰岩の台地を作るわけですから、石灰岩は溶食されてカルスト地形を形成します。 

 カルスト地形の地図記号 

  地図記号:陸上のおう地

サンゴ礁の見られる場所 

 造礁サンゴの生育条件を満たす場所は、赤道から南北回帰線の辺りまでです。大陸西岸は寒流が流れるためサンゴ礁はあまり見られず、大陸東岸は暖流の影響で回帰線を越えてサンゴ礁が分布します。 

 高校地理においては、堡礁の例としてオーストラリアのグレート・バリア・リーフ(大堡礁)が、環礁の例としてムルロア環礁(仏領ポリネシア)やビキニ環礁(マーシャル諸島)が紹介されます。 

 また「サンゴ礁の国」として、トンガ、ツバル、キリバス、モルディブなどの国名が登場します。 

サンゴ礁と人間生活 

 サンゴ礁でできた島は標高が低いため淡水の確保が難しく、人間が生活に適しているとは言えません。ですので、少人数で漁業を中心とした暮らしを送ってきました。 

 環礁はその地形的特徴から、第二次大戦後は核実験の場として利用されてきました。 

 1990年代以降はグローバリゼーションが浸透し、飛行機を使った国際旅行が隆盛を極め、サンゴ礁の島々はリゾート開発が進みました。 

環境問題とサンゴ礁 

 地球温暖化はサンゴ礁に影響を与えます。まず、海水温が30℃を上回るとサンゴ礁は白化現象を起こし死んでしまいます。次に、サンゴ礁の島々は標高が低いため、地球温暖化による海水面の上昇で水没の危機にあります。水没を免れても、温暖化による低気圧の発達で高潮の被害にあう頻度も増えます。キリバス、フィジー、ソロモン諸島などでは、すでに高地への移転が進んでいたり、全島移住を計画したりしている場所もあります。 

まとめ 

 南国のリゾートを想起させるサンゴ礁ですが、水没してしまっては遊びに行くこともできません。受験のための暗記で「裾礁!堡礁!環礁!」とか唱えているだけでなく、受験生11人にも何かできることがないか考えてほしいものです。 

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