成帯土壌と間帯土壌の違いについて解説します

  • 2020.10.31
  • 2021.01.16
  • 土壌
成帯土壌と間帯土壌の違いについて解説します

地理で登場する土=土壌が、成帯土壌なのか間帯土壌なのか、そもそも成帯土壌とか間帯土壌ってナニ? こういった疑問を地理の初学者はもつことでしょう。本記事では、具体的な土壌の紹介も交えながら、これらの疑問に答えます。 

そもそも土壌とは何か 

   そもそも土壌とは何でしょうか。岩石を粉々に砕いて砂にしてしまえば、それを土壌と言えるのでしょうか。このような砂も、実際に我々が乾いた地面で見る砂も、見た目はそれほど変わりません。しかし、ただ単に岩石を細粒化しただけのものを土壌とは呼びません。土壌とは、動植物などの影響によって作られています。ですから、月の表面には岩石が風化して砂の層ができていますが、これを「月の土壌」とは言わないわけですね。 

 「動植物などの影響」とサラっと書いてしまいましたが、土壌の生成に影響を与えるものは大きく6つです。 

  ①岩石 ②気候 ③生物 ④地形 ➄時間 ⑥人間 

 ちなみに、「現代土壌学の父」と呼ばれるロシアの土壌学者ドクチャーエフは、土壌を次のように定義しています。 

土壌とは、地殻の表層において岩石・気候・生物・地形ならびに土地の年代といった土壌生成因子の総合的な相互作用によって生成する岩石圏の変化生成物であり、多少とも腐植・水・空気・生きている生物を含み、かつ肥沃度をもった独立の有機無機自然体である」。 

岩石の影響 

 土壌は、元をたどれば岩石に行き着きます。ですので、岩石の特徴が土壌に影響を与えます。母岩の固結度、粒度、化学組成の違いといったものが、土壌の生成に関わります。気候条件等に関わらず、母岩の影響の強い土壌は「間帯土壌」と呼ばれ、これは後述します。 

気候の影響 

 気候要素のうち、降水量と蒸発量は、土壌中の水分の動きに大きな影響を与えます。降水量が多ければ、土壌中の水に溶ける物質が流れ出て失われます。蒸発量が多ければ、可溶性物質はある深度で集積します。気候が土壌に与える影響はとても大きく、土壌の分布は気候区分と似たようなものになります。このような土壌は「成帯土壌」と呼ばれます。 

生物の影響 

 動植物の遺体が土に有機物を供給しているため、生物の影響はとても重要です。それ以外にも、植物の根が地中の栄養分を地表に吸い上げる作用、地中の小動物が枯葉等を粉砕する作用、動物が巣穴を作ることで土壌が攪拌される作用などが土壌に影響します。 

地形の影響 

 例えば斜面であれば、土壌は常に下方へ移動していきます。よって、斜面上部は土壌の生成が弱く、斜面下部では厚い土壌が形成されます。また、標高が上がれば気候が変わるため、標高に応じて土壌が変化していきます。 

時間の影響 

 時間が経過すれば、地形の変化といった物理的な影響を受けますし、土壌の化学的な特徴も変化します。より酸化が進んだり、水分量が変化したりして、土壌に影響します。 

人間の影響 

 耕作・施肥・焼畑などの農業は、土壌を変化させます。また、森林を伐採して農地や牧草地に変えてしまえば、植生や日照が変化して土壌に影響を与えます。森林伐採、過度の放牧、耕作の放棄などによって、土壌自体が流出して失われることもあります。 

成帯土壌とは何か 

 成帯土壌もしくは成帯性土壌とは、前述したドクチャーエフが考え出した概念です。土壌の生成には気候や植生が大きな影響を与えるため、結果として気候分布と土壌分布は似たようなものとなります。大陸の東岸と西岸では気候が異なるため、土壌の分布も東岸・西岸で異なります。しかし東岸か西岸どちらかだけを見れば、土壌の分布はおよそ緯度が変わることで変化します。このように、緯度とほぼ水平に分布するような土壌を成帯土壌と呼びます。 

 標高が上がれば気温が下がり、気候も変わります。ですので、緯度が上がったときの変化のように、標高によっても土壌は規則的に変化をします。これも成帯土壌と言えますが、高校地理ではこの部分は触れません。 

成帯土壌①ラトソル 

 ラテン語で「レンガの土」の意。主に熱帯で見られる赤色土壌。高温・多雨のため、水に溶けやすい有機物や塩類は流失し、水に溶けにくいアルミニウムの酸化物が残ります。この鉄の錆びの色が赤色を作ります。色:赤色、肥沃度:低 

成帯土壌②砂漠土 

 極度に乾燥した気候で見られます。植生がほとんど見られないので、腐植層が発達しません。気温の日格差が大きいため、岩石は風化して砂状になります。蒸発量が多いため、地中の可溶性塩類が毛管作用により表面に集まります。塩性化しているため農業には不向きとなります。色:白色、肥沃度:低 

成帯土壌③黒色土 

 半乾燥地帯から温帯にかけての草原地帯に見られる極めて肥沃な土壌です。草原の草が枯れて土に腐植をもたらし、かつ降水が少ないため腐植層が流失しません。その結果、腐植層が発達して肥沃となります。黒色土の代表例として、チェルノーゼム、プレーリー土、パンパ土が知られています。穀物の栽培が盛んとなります。色:黒色、肥沃度:高 

成帯土壌④褐色森林土 

 温暖湿潤気候西岸海洋性気候の落葉広葉樹林地帯に見られます。落葉した葉が腐植層を作るため、肥沃な土壌となります。色:褐色(濃い茶色)、肥沃度:高 

成帯土壌➄ポドゾル 

 亜寒帯気候の針葉樹林帯に分布します。ロシア語で「灰の下」の意。低温のため植物遺体の分解が進みません。蒸発量が少ないため水分は豊富で、鉄や塩類を下方へ流してしまいます。漂泊作用により色は白っぽくなります。色:灰白色、肥沃度:低 

成帯土壌⑥ツンドラ土 

 夏にはコケ類や地衣類が繁茂しますが、全体として植生は貧弱で、腐植層は生まれません。気温が低いため、常に過湿状態となっています。色:青灰色、肥沃度:低 

間帯土壌とは何か 

 土壌の中には、気候の分布や標高と関係なく局所的に存在するものがあります。これを間帯土壌と呼びます。成帯土壌の分布する中で局所的に存在するという意味から、「成帯内性土壌」ともいいます。 

 6つの土壌生成因子のうち、①岩石・④地形の影響が強いために気候・標高との関連性が薄くなっています。 

間帯土壌①レグール土 

 インドのデカン高原に分布します。玄武岩に由来する土壌で、母岩の色が反映されて黒色となっています。この土も肥沃ですが、成帯土壌の黒色土とは成り立ちが異なります。綿花の栽培に適していることから「黒色綿花土(黒綿土)」とも呼ばれます。色:黒色、肥沃度:高 

間帯土壌②テラローシャ 

 ブラジル高原に分布します。玄武岩や輝緑岩が風化したもので、コーヒー栽培に適した赤紫色の土。テラローシャはポルトガル語で「赤紫色の土」の意。色:赤紫色、肥沃度:高 

 覚え方は「コーヒー、コーシー、テラローシャ」。コーシーとは、江戸弁でコーヒーのこと。 

間帯土壌③テラロッサ 

 地中海地方に分布する、石灰岩を由来とする間帯土壌。テラロッサはイタリア語で「赤い土」の意。地中海性気候は植生が貧弱なため、腐植に乏しく、肥沃ではありません。沖縄にも石灰岩地形の場所では似たような土が見られます。色:赤、肥沃度:低 

間帯土壌④レス 

 地形的な理由で生まれた微細な砂が、風で飛ばされて堆積した土壌。氷河地形で生まれた砂と砂漠で生まれた砂があり、前者は欧米で、後者は中国で見られます。チェルノーゼムやプレーリー土といった肥沃な黒色土も、レスが腐植化したものです。色:黄色、肥沃度 :高 

まとめ 

 高校地理において、土壌は気候の単元で扱います。土壌を学ぶときには、「成帯土壌か間帯土壌か」、「どの気候と結びつくか」、「色は」、「肥沃か」、「どの作物と結びつくか」、「分布域は」、こういったことをセットで覚えていかなければなりません。大変ですが、一度覚えてしまえば混乱することもないでしょう。 

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