【Cfb】西岸海洋性気候の特徴・ブナ気候とは

  • 2020.10.25
  • 2021.01.05
  • 気候
【Cfb】西岸海洋性気候の特徴・ブナ気候とは

西岸海洋性気候は、地中海性気候と並んでケッペンの気候区分を代表する気候区です。とくに、「Q:西岸海洋性気候区(ヨーロッパ)が緯度の割に温暖な理由を述べよ」という出題は高校入試の頻出問題です。本記事では、西岸海洋性気候の特徴、なぜ西岸なのか、なぜ海洋性なのか、こういった疑問に答えます。 

西岸海洋性気候(Cfb)の特徴 

 ケッペンが西岸海洋性気候に付けた記号はCfbです。Cは温帯、つまり「熱すぎず寒すぎず」ということ。fは「feucht(湿った)」すなわち「一年中雨が降る」ということ。受験のためだけの勉強なら、full season(一年中)雨がfuru(降る)のfと覚えてもよいでしょう。最後のbは、Cfを更に気温でCfaCfbCfcと区分するときのbです。 

 もう少し具体的に言い換えます。「熱すぎず寒すぎず」とは「最寒月平均気温が-3℃以上18℃未満」のことで、「温かい」ということです。「一年中雨が降る」とは、「s型でもw型でもない」ということです。最後のbは、「最暖月平均気温が22℃未満」つまり「夏の気温がそれほど上がらない」ということを意味します。 

  

 C ⇒ 温帯 = 最寒月平均気温 が -3℃ 以上 18℃未満 

 f ⇒ 一年雨が降る = s型(「冬の雨量」が「夏の雨量」の3倍以上)でもなく、 

             w型(「夏の雨量」が「冬の雨量」の10倍以上)でもない 

 b ⇒ 夏に高温にならない = 最暖月平均気温が22℃未満 

  

 このような気候がなぜ発生するのでしょうか。それは主に、緯度の高さ、暖流、偏西風の三つの理由で説明されます。 

 Cfb気候で区分されている場所の多くは、緯度でいうと4060度の範囲に収まります。これは日本でいうと、北海道から樺太にかけての緯度帯です。これだけ緯度が高ければ、冬の平均気温は-3℃を下回り、温帯ではなくて亜寒帯に区分されそうなものです。しかし大陸の西岸では、高緯度地方まで暖流が流れ込んでおり、暖流で暖められた空気を偏西風が陸地まで運んでくれます。その結果、本来は低温のはずの高緯度で、そこそこ温かい場所が生まれるというわけです。 

 中~高緯度の大陸西岸は、偏西風の影響で海の影響を受けます。言い換えれば、大陸東岸と違って季節風の影響をあまり受けません。ですので、一年を通して海から湿った風が入り込み、一年を通して雨が降る(ただし大雨ではない)ことになるのです。 

西岸海洋性気候(Cfb)の雨温図 

 

 まず気温を見ます。最寒月平均気温が-3度以上18℃未満であること。これで温帯と判断します。 

 次に雨の降り方がs型でもw型でもないことを読み取ります。数字を用いれば、s型は冬に夏の3倍以上の降雨、w型は夏に冬の10倍以上の降雨があるので、どちらも当てはまらないのがf型というわけです。受験地理では、微妙なレベルでswfの判別をするような問題は出されないでしょう。そういった問題は良い問題とは言えません。 

 最後に夏の気温を見ます。最暖月の平均気温が22度未満であることを確認し、Cfbであることを確定させます。 

 なお、月平均気温が10℃以上の月が4か月未満の場合、Cfcという区分を使うこともあります。しかし高校地理および受験地理では無視してもよいでしょう。 

西岸海洋性気候(Cfb)の植生

  西岸海洋性気候は、温かくて一年中雨の降る気候区です。それだけ見れば、植物にとって条件は悪くなさそうです。しかし、この気候区は比較的緯度の高い地域に見られるので、冬はそれなりに寒くなります。よって、冬になると寒さ対策として葉を落とす落葉広葉樹林が生育します。  

西岸海洋性気候の樹種

  そもそもケッペンは、ヨーロッパの植生分布をもとに気候区分を作ったので、ヨーロッパにおける西岸海洋性気候はある植生の分布とほぼ一致しています。その植物がブナでして、この気候区が「ブナ気候」と呼ばれる理由となっています。 

 世界遺産の白神山地がブナの原生林で知られているように、日本でもブナは一般的な樹種です。 

ブナの写真 

  

西岸海洋性気候(Cfb)の土壌 

  落葉樹が分布するということは、落ち葉によって土に栄養が補充されます。そして適度に雨が降り、日光も強すぎないということで、肥沃な土壌が作られます。この地域の土壌は、褐色森林土と呼ばれます。 

 西岸海洋性気候(Cfb)の分布

  西岸海洋性気候を作るのは、暖流と偏西風です。ですので、緯度的には40~60度の辺りで、暖流が流れる大陸西岸が中心となります。 

 しかし、オーストラリア南東部からニュージーランド一帯は、大陸東岸であるのに西岸海洋性気候となるので注意が必要です。 

 ヨーロッパでは大きな山脈が東西に伸びるため、暖流の暖気と湿気を偏西風が内陸まで運んできます。よって、ヨーロッパにおける西岸海洋性気候区は面として広がっています。ところが、南北アメリカ大陸では大きな山脈は南北に伸びるため、暖気と湿気は海岸部にしか届かず、西岸海洋性気候も海岸に分布する形となります。 

  

 Cfbの分布 … 大陸西岸の南北40~60度の辺り 

ヨーロッパ ⇒ 西ヨーロッパの大部分(イギリス、フランス、ドイツなど) 

アジア ⇒ 無し 

アフリカ ⇒ 南アフリカ共和国に一部あるが重要ではない 

北米 ⇒ カナダ~アラスカの太平洋岸 

南米 ⇒ チリ南部の太平洋岸 

オセアニア ⇒ オーストラリア南東部~ニュージーランド 

西岸海洋性気候(Cfb)における人々の生活 

  先述したように、南北アメリカ大陸の西岸海洋性気候は海岸部に限定されるため、主にヨーロッパにおける気候と人々の生活の関係を見ていきます。 

 この気候区は一般的には土が肥沃なため、穀物栽培とくに小麦栽培に適しています。よって、フランスやドイツでは小麦栽培が盛んです。しかし、緯度が高いがゆえに、かつて大陸氷河が広がっていたような場所では、土壌の層が薄く、穀物栽培に適さない場合があります。その場合はイギリスのように酪農が中心となります。 

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