ジェントリフィケーションについて事例を交えて紹介します

ジェントリフィケーションについて事例を交えて紹介します

ジェントリフィケーションは、荒廃した都心部を再開発して、その結果として住民の構成が変化し高級化することです。高校地理の集落の分野にはカタカナ用語が多く、受験生が混乱する箇所でもあります。本記事では、ジェントリフィケーションとはそもそも何なのか、そして世界の事例を紹介します。 

ジェントリフィケーションの意味 

  ジェントリフィケーション(gentrification)という単語を『ジーニアス英和辞典』で調べてみると、「(貧民街の)高級住宅地化」と書かれています。高校地理でも同じような意味で使われます。ちなみに、gentry が「紳士階級」で、gentrifyが「(貧民街を)高級住宅地化する、上品(高級)にする」という意味だそうです。 

 しかし用語というのは、誰か最初に使い始めた人がいるものです。ジェントリフィケーションという用語を社会学的な意味で使い始めたのは、イギリスの社会学者ラス・グラス(Ruth Glass)(ドイツ生まれ)でした。彼女は1964年にロンドンの研究においてジェントリフィケーションという用語を用いました。ロンドンのイズリントン地区では、下層労働者階級の集まる地区に中流階級が移り住むようになり、地区全体が高級化していったことを彼女は紹介したのです。 

ジェントリフィケーションの例①イギリス 

  高校地理でジェントリフィケーションの例として頻繁に登場するのが、ロンドンのドックランズ地区です。 この地区はテムズ川沿いの一帯で、ドックランズのドック(dock)は波止場とか埠頭を意味します。今でこそ、この一帯は大ロンドン都市圏の中心寄りに位置していますが、かつてはロンドンの東のはずれに位置していました。ロンドンがスプロール現象で拡大し、18世紀ごろ都市の東側に存在したスラム地区がイーストエンドと呼ばれる一帯です。イーストエンドとドックランズは同一のものではありませんが、似たようなエリアを指しています。 

 1900年ごろのロンドンを描いたシャーロックホームズの「唇のねじれた男」という作品の中で、ホームズがロンドンのアヘン窟に入り浸っている様子が描かれています。たしか、これがテムズ川沿いにあったと書かれていた記憶があります。とにかく、あまり治安の良い地区ではなかったわけです。 

 1980年代になってドックランズ地区の再開発が始まり、現在では高級マンション、高級ホテル、オフィスビルなどが集まる地区に生まれ変わりました。私は昨年、テムズ川のリバークルーズに乗る機会があり、ドックランズ一帯を見てきました。かつてのスラムを彷彿とさせるような雰囲気はまったく感じられず、ただただ奇麗な場所でした。 

ジェントリフィケーションの例②アメリカ 

 アメリカにおけるジェントリフィケーションの例として授業で登場するのが、ニューヨークのハーレム地区とソーホー地区です。 ハーレム地区はマンハッタンの北部に位置し、20世紀になってアフリカ系アメリカ人が集まる地域となりました。一時は都市環境が悪化しましたが、1990年代に当時のジュリアーニ市長の強力なリーダーシップにより町は作り替えられたのでした。現在は観光客が集まる地区へと変貌しています。 

 ソーホー地区はもともと工場や倉庫の多い地区でしたが、使われなくなったこれら施設に芸術家などが住み始め、芸術の街の様相を呈してきました。しかし、これが逆に観光客にとっては魅力となり、見物客で賑わうようになります。すると、観光客目当ての商売が集まり、家賃は上昇し、結果として芸術家たちは他の安い地域へと移って行ってしまうのでした。このように、地域のブランド力が高まって人が集まり高級化していくというサイクルは、日本を含め多くの都市で見られるものです。 

ジェントリフィケーションの例③日本 

  東京にはジェントリフィケーションの例が多くみられます。最近では港区白金が、小工場群から超高層マンション群に生まれ変わりました。また渋谷区代官山は、同潤会アパートがあった頃は、駆け出しの芸術家や小さな雑貨屋を開く若者が集まるような町でしたが、現在は綺麗な近代的な都市に生まれ変わっています。 

まとめ 

  高校地理の「集落」の単元には、カタカナ用語が多く登場します。セグリゲーション、ジェントリフィケーション、プライメイトシティ、インナーシティ、メガロポリス、コナーベーション、スプロール等々、、、。一つ一つの用語にストーリーがありますので、ただの用語暗記に走らないことが大切です。 

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