レアメタルとは具体的にどのような金属をいうのか

レアメタルとは具体的にどのような金属をいうのか

レアメタルは日本語で「希少金属」と表記されるように、希少な金属です。希少ですので、量が少ない、もしくは偏在しています。それでいて現代社会にとって欠かすことのできない金属なわけですね。一方で、どの金属がレアメタルで、どの金属がレアメタルでないのか。本記事では、レアメタルとみなされている具体的な金属をまとめています。

レアメタルにはどのような金属があるか

『地理用語集 第2版』(山川出版社)(2019年)では、レアメタルの例として「コバルト、クロム、モリブデン、マンガン、ニッケル、チタン、バナジウム、タングステン、ジルコン、アンチモン、バリウムなど」と、11種類があげられています。

たまたま手元にあった『地理用語集 改訂版』(山川出版社)(1992年)では、「コバルト、クロム、モリブデン、マンガン、ニッケル、シリコン、チタン、バナジウム、タングステン、ジルコン、アンチモンなど」となっていて、数は同じ11種類ですが、内容に関してはシリコンが消えてバリウムが加わっていることが分かります。「など」ですので、これらがすべてではないのですが、この入れ替えには出版社・執筆者の意図があるはずです。

ちなみにWikipediaでは30種類ほどが紹介されています。

レアメタルの利用価値と生産量

この章では、上記『地理用語集 第2版』で紹介されている11種類のレアメタルについて、何に利用されるのか、そして生産量の多い国はどこかをまとめていきます。(統計は、地理資料集、国勢図会、インターネット等から掻き集めています。条件が揃っていないので、あくまで参考程度としてください)

コバルト

コバルトを含む合金は、高温、腐食に強いため、溶鉱炉やジェットエンジンなどに利用されます。磁石の原料となります。陶磁器やガラスに混ぜて、色を青くします。

生産(2016年)①コンゴ民主56.6%②オーストラリア4.9%③ロシア4.9%④キューバ4.5%➄カナダ3.8%

クロム

硬くて錆びにくいため、ステンレス鋼やクロムメッキの材料となります。

生産(2015年)①南ア共42.9%②カザフスタン19.6%③トルコ12.5%④インド10.7%➄フィンランド2.7%

モリブデン

合金のクロムモリブデン鋼(通称クロモリ)は、自転車のフレームに使われます。その他、ハイブリッドカー、ロケット、液晶パネル製造ラインで使われています。

生産(2015年)①中国35.3%②チリ22.4%③アメリカ合20.2%④ペルー8.6%➄メキシコ4.8%

マンガン

製鉄の過程で必要となります。また、乾電池やリチウム電池の正極に使われます。

生産(2015年)①南ア共34.7%②オーストラリア17.0%③中国12.3%④ガボン11.3%➄ブラジル7.2%

ニッケル

耐食性、導電性、耐熱性が高いです。精密機械に使われる他、日本の50円、100円硬貨に使われています。形状記憶合金の材料となります。

生産(2015年)①フィリピン24.3%②ロシア11.8%③カナダ10.3%④オーストラリア9.7%➄仏領ニューカレドニア8.2%

チタン

軽くて耐食性、耐熱性が高いです。この特徴を生かして、航空機、ロケット、ミサイル、潜水艦、スポーツ用品などに使われます。金属製クレジットカードの材料にもなっています。

生産(2015年)①オーストラリア15.8%②南ア共15.3%③中国13.6%④モザンビーク8.3%➄ウクライナ7.0%

バナジウム

鉄鋼に添加してバナジウム鋼を作ります。耐熱性が強く、原子炉やターボエンジンなどのタービンに使われます。

生産(2015年)①中国54.0%②ロシア20.6%③南ア共18.0%

タングステン

金属としては融点が高いので、耐熱性の鉄鋼合金の材料となります。電球のフィラメントや、戦車の装甲、砲弾などに使われます。

生産(2015年)①中国81.7%②ベトナム6.3%③ロシア2.9%④カナダ1.9%➄ボリビア1.6%

ジルコン

ジルコニウム。原子力発電等の原子炉で使われます。

生産(2014年)①オーストラリア43%②南ア共28%③中国9%

アンチモン

プラスチック製品や繊維製品の難燃助剤などに使われ、自動車、家電、OA機器などで欠かせないものとなっています。

生産(2015年)①中国78.0%②ロシア6.4%③タジキスタン5.7%④ボリビア3.0%➄オーストラリア2.6%

バリウム

油田・ガス田の採掘で使われています。日常生活では、X線検査の際に飲むバリウムが有名ですね。

生産(2010年)①中国52.2%②インド14.5%③アメリカ9.7%④モロッコ6.7%➄イラン3.6%

日本におけるレアメタルの状況

 レアメタルは限られた資源量や偏在性により、また資源メジャーの戦略や資源国の資源ナショナリズムにより、価格が急騰したり入手が困難になったりします。そのようなときに日本の企業が活動を継続できるよう、重要な7種類のレアメタルについて60日分を目標に備蓄する制度があります。これを担っているのが、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)です。レアメタルの国家備蓄制度は、オイルショックを経て資源の重要性に気付いた後の1983年に創設されました。

 備蓄されている7種類の金属はニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウムとなっています。これまで21回の放出・売却が実施されています。

都市鉱山

 スマホや家電などの電子機器で使用されるレアメタルですが、それら電子機器が廃棄されるときにレアメタルも廃棄されてしまうのでは資源が無駄になってしまいます。そこで、廃棄される電子機器からレアメタルを取り出す取り組みが行われています。「捨てられた電子機器が山と積まれていて、そこから資源を取り出す」というイメージから都市鉱山と呼ばれています。日本には小型家電リサイクル法という法律があります。私も、不要になった小型家電は役所の回収ボックスに入れるようにしています。

 先日、アルジャジーラを観ていましたら、フィリピンのスラムで生活する人たちのドキュメンタリーを放送していました。登場人物の一人は、ゴミ捨て場で金属を探してリサイクル業者に販売するという方法で生計を立てているようでした。

まとめ

 レアメタルと一言で言っても、そこには多様は金属が含まれています。価値の高い金属ではありますが、日常会話の中で個々の金属が話題になることは稀です。中学社会や高校地理の授業で、レアメタルについてざっくりと説明する必要があるときに利用できる記事になっていれば幸いです。

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