サバナ気候は、ケッペンの気候区分の中で、地中海性気候と並んで特に重要視される気候です。夏と冬で気象の変わる理由を理解することが求められます。また、サバナ気候の雨温図は特徴的でテストにも頻出ですので見慣れておきたいところです。
サバナ気候(Aw)の特徴
ケッペンがサバナ気候に付けた記号はAwです。Aは熱帯、つまり「年中高温」で、wはすなわち「冬に雨が少ない」ということです。雨季と乾季がはっきりと分かれているのがサバナ気候の一番の特徴です。
もう少し具体的に言い換えます。「年中高温」とは「最寒月平均気温が18度以上」のことで、「冬がない」ということです。「冬に雨が少ない」とは「最少雨月の降水量が60mmを下回る」ということで、これが乾季となります。wはドイツ語「winter trocken」(冬季乾燥)の頭文字です。
「冬がない」のに「冬に雨が少ない」というのも変な話ですが、サバナ気候区であれば赤道から若干離れていますので、一応気温の年較差が発生します。北半球であれば12月や1月のあたりが「冬」の扱いを受けます。
雨季だからといって一日中雨が降り続くわけではありません。雨は、スコールという形で、まとまった雨が降ることが多いです。
雨季と乾季に分かれる理由としては、雨季は熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響下に入り、乾季は亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下に入るからです。
夏 … 熱帯収束帯(赤道低圧帯) ⇒ 雨季
冬 … 亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯) ⇒ 乾季
用語解説 スコール:狭義には「急な突風」のことを言いますが、一般的には「熱帯地方にみられる強風を伴う急な大雨」のことを意味します。高校地理・受験地理では、後者のような認識で問題ありません。日本の夕立にも似ています。スコールも夕立と同様に夕方前後に発生することが多いのですが、筆者がバンコクで1年間生活した体験としては、明け方に発生するスコールも珍しくありませんでした。
サバナ気候(Aw)の雨温図
読み取り方としては、最寒月平均気温が18℃以上であること。そして最少雨月の降水量が60㎜を下回っていることです。60㎜を下回っている場合、Am気候とAw気候の可能性が出てきます。Am気候は「弱い乾季のある熱帯雨林気候」という呼ばれ方もするくらいですので、最少雨月の降水量がAmのほうがAwよりも多いのではないかと思ってしまいますが、違います。
「明瞭な乾季」と「弱い乾季」の判別ですが、一概に乾季の降水量が少なければ「明瞭」というわけでもなく、年間総降水量と最少雨月降水量を比較して導き出されます。教科書でも資料集でも必ず出てくる次の図を用いるわけですが、計算式としては
y = -0.04x + 100
y … 最少雨月降水量
x … 年降水量
という式が使われます。しかし、この計算式を使わなければ答えられないような微妙な判別の出題はめったにされないでしょう。そのような出題はするべきではありません。
サバナ気候の雨温図として試験等にもっとも登場するのがバンコク(タイ)のものです。これはとても特徴的な雨温図となりますので、見た瞬間に「これはバンコクの雨温図でAwだ」と分かるくらいに見慣れておきましょう。
夏というのは7~8月が中心で、この時期が最暖月となるのが一般的ですが、Aw気候区は違います。とくにバンコクの場合、4月の後半から雨季が始まりますので、雨の影響で気温が下がります。その結果、4月が最暖月となるのです。タイにはソンクラーンというタイ正月があり、この祭りを4月の中旬におこないます。日本では「水かけ祭り」として知られ、お互いに水をかけあって楽しみます(本来は宗教的な儀式ですが)。このタイ正月が終わるころに雨が降り始め、雨季の始まり、つまり1年の始まりを迎えるのです。
サバナ気候(Aw)の植生
熱帯とはいえ明瞭な乾季があるため、密林は作られません。木は生えていたとしても疎ら(疎林)で、地表には丈の長い草(長草草原)が生えています。乾季には木は落葉し、草原も枯れます。この植生をアフリカでサバナ(サバンナ)と呼んでいたことから、サバナ気候と名づけられました。アフリカ以外の地域では、サバナ以外に様々な呼び方使われています。
リャノ … オリノコ川流域(コロンビア~ベネズエラ)。スペイン語で「平原」の意。雨季は水没するため、農業は発達せずに牛の放牧が盛んであった。現在は治水が進んでいる。
グランチャコ … アンデス山脈とラプラタ川の間に広がる平原。ボリビア南部~パラグアイ~アルゼンチン北部に広がる。グランはスペイン語で「大きな」、チャコは現地語で「狩猟地」。
カンポ … ブラジル高原にみられる熱帯草原。樹木はあまり生えていない。ポルトガル語で「野原」の意。
セラード … ブラジル高原にみられる疎林。草原の中にまばらに低木がみられる。ポルトガル語で「閉じている」の意。
カンポ・セラード … カンポとセラードを区別せずに合わせて呼ぶ言い方。
サバナの樹種
サバナ気候区で見られる樹木のうち、高校地理に登場する樹種をまとめます。(主にサバナ気候区で見られる樹種ですが、それ以外の気候区でも見られます。)
マングローブ:熱帯から亜熱帯にかけて、淡水と海水の混じる場所、すなわち河口周辺に見られる森林。水面下に根を張る外見が特徴的。水面下の根の周りには小動物が集まり巣とするため、生態系保護の観点からも重要。高校地理では、「東南アジアにおいてマングローブを伐採してエビの養殖池を作っている」ということで環境問題のネタとして頻出。
マホガニー:見た目の美しさから、高級家具の材料として使われる。西インド諸島からフロリダ半島に分布。高額で取引され、見つけるのが難しいことから、「マホガニー狩り」が行われる。現在は植林が進んでいる。
バオバブ:マダガスカル島とオーストラリアのみに自生。外見が特徴的なので、写真による読み取り問題も出されうる。
アカシア:高校地理では、サバナ植生を代表する樹種として紹介されることが多い。アフリカとオーストラリアに分布する。
バオバブの写真
サバナ気候(Aw)の土壌
熱帯では、スコールのような、まとまった雨が降ります。すると作物にとって養分となる成分は、雨水に溶けて流れ出してしまいます。一方で、熱帯といえども雨が降らない時間は、高温と強い日光が地表にそそがれます。すると地中の水分は蒸発して、鉄やアルミニウム成分が表面に集まってしまいます(鉄・アルミナ富化作用)。こうやって作られる土をラトソルといいます。
ラトソル:熱帯に見られる成帯土壌。色は赤系。ラトソルは「レンガの土」の意。養分が溶脱しているため肥沃ではない。固化したものはラテライトと呼ばれる。とくにアルミニウム成分の多いものはボーキサイトと呼ばれる。
サバナ気候(Aw)の分布
サバナ気候は、明瞭な雨季と乾季のある熱帯気候です。雨季は熱帯収束帯(赤道低圧帯)が、乾季は亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)が作り出します。この二つの気圧帯が季節ごとに移動してくる理由は、地球の傾きによるものです。このような理由から、サバナ気候は、熱帯雨林気候の高緯度側に分布します。
アジア ⇒ デカン高原、インドシナ半島
アフリカ ⇒ ギニア湾岸~エチオピア、コンゴ民主
中南米 ⇒ メキシコ南部、西インド諸島、コロンビア~ベネズエラ、ブラジル高原
オセアニア ⇒ オーストラリア北部
サバナ気候(Aw)における人々の生活
本来は土が肥沃でないため、焼畑によってその灰を肥料とする焼畑農業が見られます。しかし、人口の増加によって焼畑の面積を拡大しすぎる(過耕作)と、森林再生のサイクルに追い付かずに森林破壊へとつながります。
欧米人によって植民地化された地域では、プランテーション農業がおこなわれ、現在に引き継がれている地域もあります。
本来は土が肥沃でないのですが、肥沃な間帯土壌が分布する地域は農業が盛んとなります。(例:デカン高原(レグール土)⇒綿花、ブラジル高原(テラローシャ)⇒コーヒー)
アジアのサバナ気候区では、夏の降水を利用して稲作が盛んとなっています。