電気機械とは、電気を利用して作動する機械器具のことです。これに含まれる製品の種類は多種多様です。高校地理では、電気機械の一種である家電についての出題が見られます。しかも、冷蔵庫、洗濯機、テレビなど、具体的な家電のデータが使われます。本記事では、家電の工業立地の特性を学びます。
電気機械工業の分類
総務省の日本標準産業分類(平成25年10月改定)によると、電気機械は次のように分類されます。
「大分類E 製造業」
↓
「中分類29 電気機械器具製造業」
↓
291 発電用・送電用・配電用電気機械器具製造業
292 産業用電気機械器具製造業
293 民生用電気機械器具製造業
294 電球・電気照明器具製造業
295 電池製造業
296 電子応用装置製造業
297 電気計測器製造業
299 その他の電気機械器具製造業
これらのうち、「291発電用~」と「292産業用~」が重電と呼ばれます。「293民生用~」には一般の家庭で使うような洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどが含まれ、家電(もしくは軽電)と呼ばれます。それら以外の小さな製品は弱電と呼ばれます。
また、「中分類30 情報通信機械器具製造業」に含まれるテレビ、パソコンなども家電に含まれることがあります。
高校地理では、これらのうち家電を扱うことが多いです。
白物家電:日常生活に深くかかわる家電で、一般的に白色の商品が多いもの。例として、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、エアコンなど。
黒物家電:主に家庭内で娯楽のために使用される家電で、一般的に黒色の商品が多いもの。例として、テレビ、DVD(BD)プレーヤーなど。
電気機械工業の立地
ここからは電気機械工業の立地について説明します。
帝国書院の教科書(平成28年検定版)では電気機械工業を集積指向型工業に分類しています。例として門真市(大阪府)があげられています。門真市には、パナソニック、タイガー魔法瓶などの製造業が拠点を置いています。
一方、同じ帝国書院の『新詳地理資料 COMPLETE 2019』という資料集では、電気機械工業は労働力指向型工業に分類されています。例として、中国や東南アジアに工場が立地すると紹介されています。
同じ教科書会社が作る教材で、このような違いが生じるのはなぜでしょうか。
家電は組立型工業です。そして自動車と同じように多様な部品から成り立っています。ですので、自動車工業と同様に「集積の利益」が生まれます。それで企業城下町のような状態ができあがり、集積志向型工業に分類されるというわけです。
集積の利益:特定の地域に様々な企業が集まることで、輸送費、営業・取引、ノウハウなど、多くの点で効率が良くなること。
ところが、集積が進めば土地代の高騰など「集積の不利益」も発生してしまいます。すると、工場は地方や海外へ移転することになります。洗濯機や冷蔵庫といった大型家電は輸送費も高くなりますが、それを考慮しても海外で製造した方が利益は増すと判断されれば、中国や東南アジアといった、近場で人件費の安い国に工場が置かれることになります。その意味で労働力指向型工業に分類されることになります。
集積の不利益:様々な産業、企業、人間などが一つの地域に集中することで、地価高騰や住宅不足、公害問題などが発生し、結果として企業の利益を押し下げること。
このように電気機械工業と一言で言っても、時代によって、そして業種によって工業の立地には違いがみられるというわけです。
家電に関する統計
冷蔵庫に関する統計
冷蔵庫(家庭用)の生産(年度注意! 万台、『データブックオブザワールド』より)
1位 中国 8,796 ←2014年
2位 アメリカ 1,038 ←2010年
3位 イタリア 854 ←2004年
4位 インド 739 ←2007年
5位 ブラジル 691 ←2015年
世界市場での冷蔵庫メーカーシェア(2015年、『日経業界地図2017年版』より)
1位 ハイアール(中国) 17.1%
2位 ワールプール(アメリカ) 11.1%
3位 エレクトロラックス(スウェーデン) 7.0%
4位 LG(韓国) 6.5%
5位 サムスン(韓国) 6.1%
日本市場での冷蔵庫メーカーシェア(2015年、『日本業界地図2017年版』より)
1位 パナソニック 22.7%
2位 シャープ 20.4%
3位 日立 17.9%
4位 三菱 15.2%
5位 東芝 9.0%
洗濯機に関する統計
洗濯機(家庭用)の生産(年度注意! 万台、『データブックオブザワールド』より)
1位 中国 7,114 ←2014年
2位 アメリカ 1,601 ←2010年
3位 イタリア 983 ←2004年
4位 ポーランド 896 ←2015年
5位 トルコ 874 ←2015年
日本の電気冷蔵庫の輸入元(2017年、財務省貿易統計より)
1位 中国 70.8%
2位 タイ 23.6%
3位 インドネシア 5.4%
その他 0.2%
世界市場での洗濯機メーカーシェア(2015年、『日経業界地図2017年版』より)
1位 ハイアール(中国) 18.9%
2位 ワールプール(アメリカ) 15.4%
3位 美的集団(中国) 9.0%
4位 LG電子(韓国) 7.6%
5位 エレクトロラックス(スウェーデン) 7.0%
日本市場での洗濯機メーカーシェア(2015年、『日本業界地図2017年版』より)
1位 日立 30.1%
2位 パナソニック 26.9%
3位 東芝 19.6%
4位 シャープ 15.0%
その他 8.4%
テレビに関する統計
世界市場でのテレビメーカー別販売額(2013年、総務省HPより)
1位 サムソン(韓国) 25.6%
2位 LG(韓国) 14.8%
3位 ソニー(日本) 7.9%
4位 TCL(中国) 5.9%
5位 ハイセンス(中国) 5.6%
日本のカラーテレビの輸入元(2017年、財務省貿易統計より)
1位 中国 64.7%
2位 マレーシア 20.4%
3位 タイ 10.9%
その他 4.0%
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