高校地理ではオマケの地形の扱いを受けているものの、受験でもときどき出題されるカルスト地形。受験勉強の際は、「ドリーネ⇒ウバーレ⇒ポリエ」と呪文のように唱えることになります。しかし私は、桂林やカルスト地方、秋吉台や秩父など、白地図で場所を指し示すことができるようになっておく必要があると思っています。本記事では、カルスト地形について解説します。
カルスト地形はどのような地形か
石灰岩の多い地域で見られる地形を、カルスト地形と呼びます。これは、スロベニアのカルスト地方が名前の由来となっています。
石灰岩は、炭酸カルシウム(CaCO3)で主に構成されている堆積岩です。造礁サンゴや造礁性二枚貝など生物に由来する石灰岩と、温泉や海水で無機的に作られる石灰岩があります。全地表面積の約7%が石灰岩でしめられています。
炭酸カルシウム(CaCO3)を含んだ石灰岩は、二酸化炭素(CO2)を含んだ水によって溶解されます。このように、岩石が水に溶解されて侵食が進むことを溶食といいます。このときに造られる特異な地形が、カルスト地形です。
各種カルスト地形
凹地形(ドリーネ、ウバーレ、ポリエ)
雨水が石灰岩を溶食し、すり鉢状の凹地を作ります。これをドリーネといいます。ドリーネが拡大し、隣接するドリーネと連結すると、これをウバーレとよびます。ドリーネ、ウバーレが更に拡大し、谷底の面積が100km2を超えるものはポリエとよばれます。よって、
ドリーネ ⇒ ウバーレ ⇒ ポリエ
の順番で覚える必要があります。
鍾乳洞
石灰岩地形の地下に浸透した雨水は、地下の石灰岩を溶食することで鍾乳洞と呼ばれる洞穴を形成します。教科書等に載せられる鍾乳洞の写真は広大なものですが、私が実際に訪れた静岡県浜松市にある竜ヶ岩洞という洞穴は、ぎりぎり観光客が通れるように削り開いたものでした。
タワーカルスト
石灰岩は、完全に均質に広がっているわけではないため、溶食に強い場所と弱い場所があります。溶食に強い場所は残丘状に取り残されるため、円錐型の丘や山を作ります。これを円錐カルストといいます。円錐カルストには半円球状のコックピットカルスト(ジャワ島に多い)と、細長い山となるタワーカルストがあります。高校地理では、この二つのうちのタワーカルストが紹介されています。
タワーカルストは中国の桂林(コイリン)周辺で見られます。タワーカルストは、山水画の題材として日本では知られていますので、桂林には多くの日本人観光客が訪れています。私も、桂林の近くの陽朔(ヤンシュオ)という町に10日間ほど滞在したことがあります。周囲はタワーカルストだらけで、いかにも仙人が住んでいそうな神秘的な雰囲気がありました。
カレンフェルト
石灰岩の割れ目や岩質の差によって、溶食の進みの速い場所と遅い場所が生じます。溶食が進んだ場所は溝を作り、これをカレンと呼びます。溶食が進まなかった場所は岩柱として残ります。これをピナクルといいます。このピナクルが林立する一帯をカレンフェルトと呼びます。
カルスト地形を地形図で読み取る
センター試験(共通テスト)レベルであれば、おそらく秋吉台や平尾台といったメジャーな場所の地形図が使われることが多いでしょう。その場合、地形図中には「せっかい」という鉱山や「千仏鍾乳洞」と描かれていたりするので、カルスト地形だと推測できます。
等高線から判別する場合には、ドリーネやウバーレは凹地ですので、凹地を表す次の二つの地図記号「陸上のおう地(小)(大)」が使われます。
カルスト地形の見られる場所
スロベニア カルスト地方:カルスト地形の名前の由来となった場所。スロベニアの位置を地図で確認しておきましょう。スロベニア語ではクラス地方。
中国 桂林:タワーカルストが見られる。
日本 秋吉台(山口県):日本を代表するカルスト地形の土地。秋芳洞という大鍾乳洞がある。
平尾台(福岡県):日本を代表するカルスト地形の土地。
カルスト地形とセメント工業
カルスト地形で産出される石灰石は、セメント工業の主原料となります。日本では年間約7900万トンの石灰石がセメント向けに出荷されています。これは、全出荷量の47%に相当します。石灰石は、他にも21%がコンクリート向け、13%が鉄鋼向けに出荷されています。(データは、下記HPより)
国内の主なセメント工業都市
秩父市(埼玉県)
宇部市(山口県) ← 秋吉台
周南市(山口県)
北九州市(福岡県) ← 平尾台
石灰石鉱業協会HP www.limestone.gr.jp/
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