【緑の革命】緑の革命を導入した各国の事例、成果と課題【IR8】

【緑の革命】緑の革命を導入した各国の事例、成果と課題【IR8】

 発展途上地域の食糧問題を解決するために、農作物の品種改良や栽培技術の改善を図った結果、一定の成果が得られました。これを緑の革命と呼んでいます。英語ではGreen Revolutionとなります。とくに小麦・稲・トウモロコシといった穀物栽培で進められた開発ですが、高校地理ではアジアにおける稲作に関する話が中心となっています。本記事では、各国の導入事例と成果・課題を紹介します。

緑の革命における品種改良

 地理の教科書や資料集には、ただ単に「高収量品種に改良した」としか書かれていません。実際はどのようにして高収量を実現したのでしょうか。これは小麦や稲の矮小化によるものです。英語ではdwarf wheatとかdwarf riceと呼びます。茎だけが短く穂が長い品種に改良することで、穂の重さに耐えられるようにしました。これにより、肥料を投入して多くの穂が実っても作物が倒れないため、最終的な収穫量が増加したのです。

 

緑の革命における栽培技術の改善

 収量が増えても作物が倒れなくなったので、より効率のよい肥料を使用すれば、その分だけ収穫量が増えることになりました。そのために化学肥料の開発も進みました。
 他には、殺虫剤の開発、灌漑施設の整備といった点で改善が図られました。

緑の革命の導入事例

メキシコにおける緑の革命

 メキシコでは、アメリカ政府やロックフェラー財団と手を結び、1950年代から60年代に緑の革命を導入しました。主に小麦やトウモロコシの栽培技術に関する改良が加えられました。メキシコでの緑の革命を指導したアメリカ人農業学者のノーマン・ボーローグには、ノーベル平和賞が与えられました。

フィリピンにおける緑の革命

 1960年に、フォード財団とロックフェラー財団の支援を受け、フィリピン政府は国際稲研究所(IRRI)を設立しました。この研究所で1960年代に作り出されたのが「IR8」という新品種の稲です。この稲は「ミラクルライス(奇跡の米)」と呼ばれています。IR8の栽培には肥料と農薬が必要となりますが、伝統的な稲作に比べて相当な収穫量が期待できます。フィリピンでの米の生産量は、20年間で2倍となり、2000年代には米の輸出国になりました。
  IR8:国際稲研究所で作り出された新品種。半矮小化された稲。フィリピンやインドで導入され高収量を実現した。そのため「「ミラクルライス(奇跡の米)」と呼ばれている。

インドにおける緑の革命

 1960年代、先述したノーマン・ボーローグの指導を受け、メキシコの緑の革命で改良された小麦品種を導入しました。その後、フィリピンの緑の革命で改良された稲(IR8)も導入しました。これでインドの穀物生産量は飛躍的に増加し、1970年代には自給を達成します。米の生産量は世界第2位(2012年)になりました。

アフリカにおける緑の革命

 メキシコやインドでの成功を受けて、アフリカにも同様の新品種を導入する試みは見られますが、今のところ成果が表れていません。これは基本的な設備が足りていないことや、現地政府が積極性に欠けることが理由としてあげられます。ただし、マラウイなどで農業改革が進んでいる事例も見られます。また、ネリカ米という新品種の米の普及が進められています。
  ネリカ米:アフリカの稲とアジアの稲をかけ合わせた新品種。アフリカの自然条件に対応し、かつ高収量が期待できる。日本政府の支援で進められているプロジェクトである。

緑の革命の課題

 緑の革命は、発展途上地域の食糧問題を解決し、彼らを穀物の輸出国にまで発展させました。しかし課題もあります。

 課題:食糧の増産がなされたため、穀物価格の低下を招いた。零細な農民はより貧困になってしまう。
 課題:化学肥料や農薬、新品種の種子購入にかかる初期費用が大きく、一部の富裕農民しか恩恵を受けられない。結果として貧富の差が拡大した。

 課題は有るとはいえ、貧困地域の飢餓を解消した功績はそれ以上に大きいものでしょう。

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