以前は、飲食店で「100%日本米を使用しています」という貼り紙をよく見かけました。気のせいかもしれませんが、最近あまり見なくなった気がします。どちらにせよ、「外国産米は食べたくないな」と警戒する消費者が以前は多かったのでしょう。タイ米(インディカ米)を嫌う人も以前ほどは多くないように感じています。本格的なインド料理やタイ料理の店が増えて、タイ米の良さに気付いたからでしょうか。今回の記事では、日本における稲作についてまとめてみました。
日本の米の産地
かつては稲作に適さなかった北海道ですが、耐寒性品種の改良によって稲作が可能となりました。現在日本の稲作は北海道から東北地方が中心となっています。その理由は様々なことが言われていますが、まとめると次のような点にあるようです。
- 雪国では、雪解けの時期に水田に水をひくことができる。
- 北海道から東北は、工場や住宅として開発されていない平野が広がっている。
- 西南日本では、米よりも生産性の高い野菜などへの転換が進んだ。
- 西南日本では、夏の気温が高すぎる。北海道から東北地方は夜に涼しくなるのが稲作に適している。
などです。
次のHPで、中高生が疑問をもちそうな内容への回答が載せられていて大変便利です。
「農業総合研究センター 水田農業試験場 米づくりQ&A」
http://agrin.jp/hp/q_and_a/qa_main.html
平成30年産 水稲の都道府県別収穫量(米穀機構より、トン)
1位:新潟県 627,600
2位:北海道 514,800
3位:秋田県 491,100
4位:山形県 374,100
5位:宮城県 371,400
6位:福島県 364,100
7位:茨城県 358,400
8位:栃木県 321,800
9位:千葉県 301,400
10位:岩手県 273,100
日本の農業政策(稲作関連)
ここでまとめる内容は、現代社会や日本史でも扱うことがあります。ですので、地理以外の先生方や受験生にとっても一度は聞いたことがある話ではないでしょうか。
戦中戦後:政府による買い取り保障、生産・流通・販売を国が管理(1942年制定の食糧管理法《1995年廃止》)⇒食糧管理制度
↓
食生活の多様化(欧米化)・品種改良・農業技術の向上⇒コメ余り(1967年に米の自給率100%達成)
↓
減反政策・自主流通米制度導入 1970年~
↓
1993年:記録的な冷夏による米不作 ⇒ 「1993年米騒動」 ⇒ 米の緊急輸入(主にインディカ米をタイ王国より輸入)
↓
1994年:GATTのウルグアイ・ラウンドで日本が米輸入に合意
GATT:「関税及び貿易に関する一般協定」の略。ガット。1995年設立のWTO(世界貿易機関)に受けつがれる。
ウルグアイ・ラウンド:GATTの交渉のうち、1986年から1994年までの期間をいう。ウルグアイで開始宣言がされた。
↓
1995年:米の輸入開始 ⇒ ミニマムアクセス米として限定的に輸入
ミニマムアクセス米:1986年から1988年までの3年間の平均消費量の4%を1995年度に輸入する。毎年0.8%ずつ輸入枠を増やし、2000年までに8%を輸入するとしていた。主に加工用に販売、または災害援助用。
:食糧管理法を廃止し、食糧法に ⇒ 米の流通を自由化 ⇒ 銘柄米の誕生
銘柄米:ブランド米とも。
国内での生産量(2018年・米穀機構より)
1位:コシヒカリ(35.0%)
2位:ひとめぼれ(9.2%)
3位:ヒノヒカリ(8.6%)
4位:あきたこまち(6.8%)
5位:ななつぼし(3.4%)
↓
1999年:ミニマムアクセス米とは別に、関税をかけて米の輸入開始
↓
2018年:TPPの一部発効 ⇒ 日本は消費量の1割に当たる年77万トンの米を無関税で輸入。
TPP:「環太平洋パートナーシップ協定」の略。アメリカが離脱したが、残りの11ヶ国で進めている経済連携協定(EPA)。11ヶ国のうちの6ヶ国で2018年に発効した。
日本における米の輸出入
日本の米の輸入元(2017年、日本国勢図会より)総量67.9万トン
1位:タイ 49.7%
2位:アメリカ合衆国 48.4%
日本の米の輸出先(商業用)(2018年、農林水産省HPより)総量1.4万トン
1位:香港 34.0%
2位:シンガポール 22.9%
3位:アメリカ合衆国 9.3%
4位:台湾 8.5%
5位:中国 3.8%
日本からの米の輸出は、政府が減反廃止の方針を決定した2013年以降、急激に増加しています。農水省はコメと加工品(米菓や日本酒)の輸出量を、19年に10万トンにするとの目標を掲げています。これは18年の実績の3倍にあたります。(日本経済新聞2019年2月13日より)
日本の米の自給率は98%です。(2016年、農林水産省HPより、重量ベース)