アルミニウムの生産には電力を必要とするため、その歴史は浅く、19世紀になってから本格的に始まっています。アルミニウムは、金属としては軽量で耐食性もあるため、アルミ缶や自動車部品、一円硬貨、家電製品など様々な用途に使われています。特に、航空機の材料としてアルミニウム合金が使われています。
アルミニウム工業の原料
アルミニウムの主な原料はボーキサイトです。ボーキサイトは酸化アルミニウムを含む鉱石です。
熱帯に分布する成帯土壌であるラトソルが乾燥して固結したものをラテライトと呼びます。ラテライトのうち、酸化アルミニウムを多く含む鉱石をボーキサイトと呼びます。
ボーキサイトを水酸化ナトリウムで処理することでアルミナ(酸化アルミニウム)を作ります。次に電力を用いて精錬することでアルミニウムが作られます。
ラトソル ⇒ ラテライト ⇒ ボーキサイト ⇒ アルミナ ⇒(電力)⇒ アルミニウム
よって、主な材料はボーキサイトですが、大量に消費する電力も重要な要素となります。
アルミニウム工業の立地
1tのアルミニウムを製造するために必要なボーキサイトの量は4tですので、本来ならば原料指向型工業になるはずです(原料>製品)。ボーキサイトは主に熱帯で採れる地下資源ですから、アルミニウム工場も熱帯に立地するはずです。ところが、アルミニウム工業では大量の電力を必要とするため、安価な電力を得られる国、例えば水力発電の盛んな国(カナダ等)や国産の燃料で火力発電を行える国(UAE等)に立地することになります。そのような理由から、アルミニウム工業は電力指向型工業に分類されます。
日本におけるアルミニウム工業
日本は発電の約90%を火力発電に頼っています。火力の燃料となる石油・石炭・天然ガスの自給率はとても低いので、日本では電力が高価なものとなります。よって大量の電力を消費するアルミニウムの精錬は、日本では行われていません。
過去には日本軽金属という企業が、静岡県静岡市(旧蒲原町)において、国内唯一となるアルミニウム精錬工場を稼動させていました。この工場では、水力発電所を所有することで電力を自前で調達してきました。しかし設備の老朽化により2014年に生産を終了し、国内唯一となるアルミニウム精練事業から撤退することになったのです。
私自身、旧蒲原町を自動車で走るときには、銀色に輝く日本軽金属の工場群を見るのは楽しみの一つでした。特に夜間は、銀色の工場群がライトアップされ、まるでSFの世界にいるかのような感覚が得られたものです。
アルミニウム工業に関する統計
アルミニウムの生産(2016年)(千t)『世界国勢図会』より
順位 | 国名 | 生産量 |
1位 | 中国 | 31,873 |
2位 | ロシア | 3,561 |
3位 | カナダ | 3,209 |
4位 | インド | 2,723 |
5位 | アラブ首長国連邦 | 2,500 |