石油化学工業の立地は、鉄鋼業と見分けよう

石油化学工業の立地は、鉄鋼業と見分けよう

 石油化学工業も、他の工業と同様に、日本地図の中で工場の分布を確認することが重要です。ただし鉄鋼業の工場分布と似ているため、この二つをしっかりと区別して覚えておかないとテストのときに混乱することになります。

石油化学工業の概要

 石油化学工業は、①原油を蒸留・精製して重油・軽油・灯油・ナフサ・ガソリン・石油ガスなどに分離させ、②そのうちのナフサをもとにプラスチック・化学繊維・ゴム・肥料・医薬品などを製造する工業です。
 1900年代に入ってから始まった比較的新しい工業です。
 日本では、原油の分離からゴム等の製造まで、種類の異なる多くの工場を一つの地域で計画的に結び付けています。そのため、これらをまとめて「石油化学コンビナート」と呼ぶことがあります。

【用語】 コンビナート:生産性向上のため、原料・燃料・工場施設を計画的に結び付けた工場群のこと。ロシア語がもとになっている。

石油化学工業の主な原材料

 石油化学工業の原料は原油です。ただし、原油から直接プラスチックやゴムが生まれるのではなく、蒸留・精製を経て分離されたナフサを材料として石油化学製品が製造されます。

【用語】 ナフサ:原油を蒸留して得られる油。ガソリンに似ている。日本国内でも製造しているが、それでは足りないため、原油だけでなくナフサ自体の輸入も多い。

石油化学工業の立地の類型

 工業国の多くが原油を石油タンカーで輸入しているため、必然的に臨海指向型工業(交通指向型工業)になります。石油化学工業で作られるゴムやプラスチックといった製品は中間財ですので、そこから各地の工場に搬出されることになります。よって石油化学工業は、工業地帯の近くにある大きな港湾施設をもった地域に立地します。この条件は鉄鋼業も同様であるため、地図から分布を判別する場合には気を付けなければなりません。
 産油国においては、原料指向型工業の立地となることもあります。なぜなら、原油を分離して得られた重油・軽油・ガソリンなど、そしてナフサから作られたプラスチック・ゴム・化学繊維などは、それぞれ輸送先が異なる場合があるからです。

石油化学コンビナートの所在地(地図)(外部リンク)

石油化学工業の統計

ナフサの生産(万t)(2013年)(『地理統計』より)

順位 国名 生産量
1位 中国 4,049 16.8
2位 韓国 2,443 10.2
3位 ロシア 2,148 8.9
4位 インド 1,704 7.1
5位 日本 1,502 6.3

 

合成ゴムの生産(千t)(2014年)(『地理統計』より)

順位 国名 生産量
1位 中国 2,895 20.4
2位 アメリカ合 2,312 16.3
3位 日本 1,599 11.3
4位 韓国 1,517 10.7
5位 ロシア 1,316 9.3

 

 

石油化学工業の代表的な工業都市

海外の主な石油化学工業都市
 ミドルズブラ(イギリス)、ロッテルダム(オランダ)、フォス(フランス)、ヒューストン(アメリカ)、ヤンブー(サウジアラビア)、ユイメン(中国)、カオシュン(台湾)
日本の主な石油化学工業都市
 鹿嶋(茨城県)、市原(千葉県)、川崎(神奈川県)、四日市(三重県)、水島(倉敷)(岡山県)、大分(大分県)

石油化学工業と鉄鋼業の分布地図を見分ける方法

 石油化学工業と鉄鋼業は、どちらも太平洋ベルト上の臨海部に集まっており、とても似かよった分布を示します。この二つの分布を判別させる出題も多いので、しっかりと見分ける方法を身につけておきましょう。
 例えば水島(倉敷)は「水島コンビナート」で石油化学工業の町として昔から有名なわけですが、同時に鉄鋼業も盛んですので、これでは判断材料になりません。鹿嶋や川崎も同じです。
 どちらかの工業しか立地いていない都市を覚えておきましょう。私の場合は、鉄鋼業に関しては加古川(兵庫)、石油化学工業に関しては四日市(三重)を判断材料にしています。ここでなければ駄目というものでもないので、御自身で何ヵ所か覚えておけばよいでしょう。

関連する項目・リンク

石油 | 臨海指向型工業(交通指向型工業)

石油化学工業協会HP www.jpca.or.jp/

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